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腸管出血性大腸菌O26による食中毒および感染症、ここ10年間の動向

トピックス : 腸管系病原菌の検索

財団法人東京顕微鏡院 理事、 麻布大学客員教授
獣医学博士 伊藤 武

腸管出血性大腸菌は一般の大腸菌と異なり下痢症や溶血性尿毒症性症候群にかかわるベロ毒素(志賀毒素)を産生する特徴がある。本毒素を産生する腸管出血性大腸菌の血清型は大部分がO157であるが、O157以外に約100の血清型が知られており、国内ではO26、O111、O103、O121、O145などの血清型が下痢患者から検出されている。

食中毒の原因究明検査や病院の散発下痢患者の検査ではO157以外にこれらの血清型を含めた検査体制で実施されている。国内で発生したO157に関しては発生状況や分離菌株の遺伝子解析がなされて、その実態が把握されている。

しかし、O157以外の血清型による流行に関しては情報が散在しており、まとまった報告がない。ここでは発生報告例が多い腸管出血性大腸菌O26に焦点を当てて、本菌の流行について解説する。

なお、解析にあたっては、病原微生物検出情報(国立感染症研究所)および厚生労働省から報告されている食中毒発生情報を参考とした。

1. 腸管出血性大腸菌O26による食中毒

腸管出血性大腸菌による食中毒を診断した医師は食品衛生法に従って最寄りの保健所に連絡しなければならない。

厚生労働省は各地域からの食中毒報告を年次ごとにまとめて情報を公開している。平成11年から平成20年の10年間に155事例の腸管出血性大腸菌食中毒が報告されている。

そのうち、130事例がO157を原因菌とし、O26が3事例(うち1事例は患者数が1名である)、O111が3事例、O119、O159、O161がそれぞれ1事例、血清型不明が17事例である。すなわち、O26を原因とする事例は腸管出血性大腸菌食中毒の1.9%に過ぎない。

表1:腸管出血性大腸菌O26による集団食中毒
発生年月日 発生場所 患者数 原因食品 血清型 備考
2003年9月 横浜市(幼稚園) 141 給食 O26:H11 推定暴露日:9月4日
2006年8月 新潟市(焼肉店) 8 焼肉 O26:H11 2次感染者2名を含む

〇26食中毒の事例1は平成15年9月10日~14日、横浜市内の6ヶ所の幼稚園において141名の患者発生があり、原因菌はO26:H11であった。いずれの幼稚園も生活圏が異なっていたが、共通の給食施設を利用していることから、給食による食中毒と判断された。9月18日に給食施設の検食や拭き取り検査を実施したが、当該菌は検出されなかった。本事例から検出されたO26:H11はパルスフィールド電気泳動による遺伝子解析で、いずれも同一の遺伝子型であると判断された。なお、園児の家族60名と家族の友人2名からも同一のO26が検出され、2次感染者と考えられた。

事例2は平成18年8月28日~9月初旬にかけてO26:H11による患者発生があった。調査の結果、これらの患者は8月26日に同一焼肉店を利用していることが判明した。焼肉店のギアラからも同一のO26:H11が検出され、分離菌株のパルスフィールド電気泳動による遺伝子解析から同一起源に由来するものと推定された。本事例では同一家族での2次感染者2名と患者が通園した保育園児1名に2次感染者が見られた。また、7名についてはO26陽性であったが、非発症者であった。

2. 腸管出血性大腸菌O26による集団感染

腸管出血性大腸菌感染症は「感染症法」では3類に分類されており、診断した医師は血清型にかかわらず最寄りの保健所に届出しなければならない。病原微生物検出情報には感染者(患者と保菌者)が10名以上の事例が報告されている。

平成10~20年の11年間のO26の報告件数は61事例である。このうち、49事例が保育所、4事例が幼稚園、その他小学校、大学、家庭である。不明の2事例は北海道とオーストラリアの修学旅行中に感染したと推察された。すなわち、O26による集団感染例はほとんどが保育所であり、人から人への感染が推察されている。保育所での流行は、以下の4点も考えられる。

  1. O26による感染を起こした幼児から健康な幼児への感染
  2. 幼児から保育士など保育所職員への感染、その後職員から幼児への感染
  3. 玩具や寝具、床などに汚染したO26に幼児が感染するケース
  4. 幼児用の小さなプールの水を介する感染

O26に感染した人は必ず発症するとは限らない。多くの事例では感染者のごく一部、特に幼児、学童が発症しているに過ぎない。

表2:腸管出血性大腸菌O26による集団感染症
発生年 発生件数(患者数)
保育所 幼稚園 小学校 大学 家庭 不明
平成10年 4 (?)
平成11年 4 (?)
平成12年 4 (?) 2 (?)
平成13年 5 (31+) 1 (1)
平成14年 4 (52) 1 (45) 1 (?)
平成15年 4 (38) 1 (?) 1 (3)
平成16年 4 (22+)
平成17年 3 (86)
平成18年 6 (63) 1 (10)
平成19年 4 (36+)
平成20年 7 (37+) 2 (29) 2 (143)*
49 (365+) 4 (39+) 2 (48) 1 (?) 1 (1) 4 (143+)

国内での報告症例から推察すると、腸管出血性大腸菌O26による発症は成人や高齢者ではほとんど見られず、乳幼児、学童に感染し、そのうち一部が発症していることから、免疫力の低い年齢層に感染・発症するものと考えられる。ただし、いずれの流行例でも2次感染者が家族や接触者に多数認められていることから、感染力が極めて強いことが考えられる。

一方、家畜、特にウシに関しては国内や諸外国でも多数検出されている。また、食肉からの検出例もあり、〇157と同様に初発は食品媒介であると推察されるが、感染経路が明確でないことから、今後とも疫学的調査が必要である。

平成20年6月に改訂された大量調理施設の衛生管理マニュアルでは調理従事者の衛生管理としての検査対象菌がO157のみであったが、その後、国内での感染例が多発していることから、これらの施設での感染防止のためにも保育所や幼稚園を対象としたO26検査を実施すべきと考える。

腸管出血性大腸菌(O26、O111、O157)の食品検査のご案内


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